脱貧困の社会にするために

7月31日・8月1日にかけて参加した「自治体学校in福井」。
ビッチリ1日半の研修です。


 開会待ち中の議員団
1日目。
国が進めようとしている地方への一括交付金化が何をもたらすのか、について大学教授の報告。
能登でブルーベリーワインや休耕田に自生するススキを活用したバイオエネルギーでまちおこしに挑戦している、「蕎麦屋の主人」の元自治体職員さんの発言。
保育所問題を考えるネットワークをつくり、国の少子化対策について一石を投じている、「AERA with baby」編集長の猪熊弘子さんの発言。
自立生活サポートセンター・もやい事務局長・反貧困ネットワーク事務局長として、派遣村を立ち上げ、ワーキングプアは路上生活に追い込まれた人などの支援や貧困問題の告発活動をしながら、内閣府参与(緊急雇用対策本部貧困・困窮者支援チーム事務局長)になっている、湯浅誠さんの発言。
 発言中の湯浅氏。写真はピンぼけですが話は超シャープ!
2日目。
私が参加した分科会は「子どもの貧困と子ども政策」。
助言者は、立教大学の浅井春夫教授。
 学生に慕われてるやろな〜という雰囲気の浅井教授
猪熊さん、湯浅さん、浅井教授と、話を聴いてみたいと思っていた3人です。
「貧困」について学び、「じゃあ、あなたはどうする?」と問われまくった一日半でした。
折しも、連日、大阪市の3歳と1歳の子どもが1ヶ月間置き去りにされて亡くなった虐待事件が報道されています。
インターホンから「ママ〜ママ〜」と子どもが泣きながら呼ぶ声が聞こえていた、という記事。
虐待で子どもが命を落とす事件を知るたびに、亡くなった子が見た最後の風景はどんなだっただろう。その子はどんな目で、表情で、その風景を見ていたのだろう。と想像しては、思考が止まります。
新聞には小さな姉弟の笑顔の写真が載っていて、たぶん、加害者の母親も「大切に育てよう」と思っていた時期もあったのだと思います。
周囲の多くの人が、ワンルームマンションの1室で起きていた異常に気づいていたのに、実際に児童相談所に通報があったのは1件だけだったということ。
周囲の人からの通報の義務は、「虐待がある」場合だけでなく「虐待の疑いがある」という段階から発生する、と強化された児童虐待防止法がきちんと機能していれば防げていたかも知れません。
こんなにも虐待事件が社会の大きな問題になっていて、周囲の人も無関心だったわけではないのに、「通報すると逆効果になるのでは?」という気遣った人もいるようです。
「虐待やその疑い」があるときの通報は、親を密告する行為なのではなく、被害にあっているかもしれない子どもを救う手助けになることはもちろん、加害者になる危険を親から取り除いて、親にも支援の手を伸ばしていくきっかけにつながるんだと、という理解がまだまだ広がっていないのだろうと思います。
そういう意味では、メディアなんかでも、最悪のケースにいたった事件について悲惨さだけを流すのではなくて、通報などをきっかけに親子が再生していった成功事例も知らせていってほしいと思います。
湯浅誠さんが、発言の中で、「『貧困』とは『貧乏』と『孤立』が重なって誰かに覆いかぶさっている状態」と言われていました。
仕事をしなければ生きていけない、という人に家族を支えるだけの収入を保障するまともな仕事をつくっていく社会。
その親が安心して仕事をできるように、子どもの生活と発達を親と一緒に保障する保育所をきちんとつくっていく社会。
たとえ、シングルであっても、親が心身の病気を抱えていたり、育児の知識がたりなかったり、家族と孤立していても、「自己責任」にせずに、前倒しで「こんな力になれるよ」と支援の手が身近にあることを多くの人が知っていて、人と人、人と行政のつながりをつくっていく社会。
そういう社会であれば、産まれてくる子どもが親や身近な信頼すべき人の手によって命を落とす、なんていう悲劇は繰り返されないのではないか、と思うのです。
浅井春夫教授は、国の「子ども・子育て新システム」の「保育の新しい仕組みづくり」は、子どもの育ちに視点を置いていないことが最大の欠陥で、危険なもの、と新システムの事例をあげながら報告されていました。
この点では、猪熊弘子さんも、4人の子どもを自らも育ててきた実感から、「子育てが本格的にビジネスにされようとしている」と警鐘を鳴らされていました。
浅井教授はさらに、国まかせでなはい、住民レベルでの「子育て政策」をつくろうと、呼びかけられていました。
 浅井春夫教授著「脱・子どもの貧困の処方箋」新日本出版社 1780円
分科会では、「子どもの権利条約」についても学びました。
京都では、多くの人にこの条約について知ってもらおうと「いのち・そだち・まなび」京都子どもネット、という団体があり、元児童福祉司や弁護士たちが「子どもの権利手帳」を作られました。
東京江東区では、公立・民間の保育士さんや父母会が大学の協力も得て、市民の手による「こうとうの保育・子育てプラン」を作られました。
そのプランを区に提示して、保育を充実させた実績もつくられているそうです。
湯浅誠さんは、NPO法人で自立支援の活動を続けながら、国の中枢に入って発言を続けられています。
今、「なぜ虐待は起きるのか」「なぜ貧困はなくならないのか」と「なぜ?」の視点を大事にしながら、自らの手で周りの人々とタッグを組んで、行政にはたらきかけていく行動が非常に大事で、では、私には何ができるか、のヒントをたくさんもらった研修でした。
長岡京市で起きた3歳の男の子が餓死をした事件。
事件からもう4年になろうとしています。
去年、参加した「児童虐待予防キャンペーン」のシンポジウムでたくさんの提言や実践報告をされたいた、そのことも再度学びなおしながら、議員として、地域に住む子育てをしている一市民として、提案や実践をしていきたいと思います。
 研修日程を終えてタクシー待ちの議員団。黄昏てるな〜
 福井駅のすぐそばの高架下では「よさこい祭り」孤立してない若者たち